村上春樹とアイロン

あなたは洗濯が終わった後のシャツにアイロンを自分で掛ける派ですか?
え?そもそもシャツは洗いざらしですって?
それはいけない、ピシッとアイロンが掛かったシャツを着てこそ、身だしなみに気を遣う男子と言えるものです。
作家の村上春樹氏もエディンバラ国際ブックフェスティバルでの講演の際に「アイロン掛けが大好きなんだ。妻の分もやってしまう」と語っています。
 Hyde in White Chambray

村上春樹氏のアイロン好きはファンのみならず、多くの人が知っていることですが、それはこうしたインタビューなどでたびたびアイロンに言及しているだけではなく、多くの作品にアイロンを掛ける描写が出てくるからです。『スプートニクの恋人』でのレコードを聴きながら3枚のシャツにアイロンを掛けるシーンが最も有名でしょうか。

また別の作品では主人公のアイロン掛けの工程が12段階に渡る事が書かれていますし、『アイロンのある風景』や『中断されたスチーム・アイロンの把手』といった短編小説もあります。そしてそのものズバリ『正しいアイロンのかけ方』と題されたエッセイもあるんです! アイロン掛けはいいですよ。無心になるというか、ココロがスゥっと落ち着いてくる。
日曜日の夕方、夕食の支度を始める前の16時ころ。月曜からの仕事の予定を思い出しながら、月曜日に着ていくのはこのシャツ、水曜日はこれ、週末はこれだなと考えながらアイロンを掛ける。すると自分の暮らしが俄然色彩豊かなものになるような気がしてきます。サザエさん症候群なんて吹き飛んでしまいますよ。 どうです?あなたもアイロン掛ける派の仲間になりませんか?

正しいアイロンのかけ方
アイロン男子が感激するシャツ

プレスのきいたBDシャツ
村上春樹氏は別のインタビューで「僕はボタンダウンシャツしかかけない。だからボタンダウンシャツのアイロンにかけては僕は天才的ですね」とも語っています。
世の中にはボタンダウンのシャツにはアイロンを掛けずに、皺も含めて洗いざらしで楽しみたいという人もいます。それもわかります。アイロンは手間がかかりますからね。
そもそもアイロン掛けは習熟するまでにそれなりの時間が必要なものです。ちなみに村上氏は大学時代からアイロン掛けを始めたそうです。

襟や前身頃は比較的簡単ですが、難しいのが袖口と後ろ身頃。というのも、ここにはそれぞれプリーツがあるからなんですね。袖口のプリーツは着脱の容易性やまくり易さのため、後ろ身頃のそれは運動性の確保のためと機能的な意味がありますが、アイロンを掛ける時の最大の難所となるものでもあります。
プリーツに沿ってうまくアイロンを掛けるのが難しいということもあるのだけれども、それより問題なのが一度失敗して元のプリーツ線を崩してアイロンを掛けてしまうと、復元不能になってしまうということ。アイロン男子ならわかってもらえると思う。
そうなると変なラインが出来上がってしまい、アイロンを掛けるたびにイライラしっぱなし。楽しいはずのアイロンタイムが苦行に代わってしまいます。 「なんとかならないのかなぁ」と嘆いていたら、ありました!ビックリ。
はい、これです。

プリーツのない袖口
背中のボックスプリーツなし
The Jackin Army Everyday Oxford

詳しくはコチラ

Taylor Stitchのシャツは、プリーツがありません。
いやね、これ、大発明だと思うんですよ。
前回も紹介さていただいたJackというシャツですが、アイロンを掛ける時の難関だったプリーツ問題もこれなら完全に解消。実はJackだけではなくHYDEやMECHANIC、CALIFORNIA、YOSEMITEといったすべてのシャツに共通なんです。

このようにTaylor Stitchの服は“長く着てもらうにはどういう物が良いのか?”を様々な角度から考えてデザインされています。耐久性だけではなくアイロンが掛けやすいということも長く付き合うには重要なんだ。いや、ホントそう思います。
ノープリーツのメリットはアイロンが掛けやすい、だけではないんです。プリーツ分の布が無いので、より体にフィットする。だから着てみると、すっきりとしたラインになります。

Nickが考えるデザイン

Taylor Stitchヘッドデザイナー、Nick Kemp

このデザインを考えたのがNick Kemp。Taylor Stitchのヘッドデザイナーです。
ニックはテキサス州で生まれジョージア州の大学で学んだ。テキサスもジョージアも広大なコットンフィールド(綿花畑)があるので有名だ。70年代のジャズ/フュージョンを代表するバンド・クルセイダーズには『ジョージア・コットンフィールド』というそのものズバリのカッコいい曲がある。
だからニックは子供のころからJackのようなコットン生地に親しんでいたんだろうね。

独学で縫製を学ぶ
ニックは大学でマーケティングを勉強していたんだそうだけど、一方で縫製も独習していたという。不思議な組み合わせだね。縫製の最初の先生はママ。母親にミシンの使い方を教えてもらったんだって。父親がいろんなビンテージ製品のコレクターだったそうで、そうしたビンテージ製品に込められたクラフトマンシップがニックを刺激し、自分でも何か作りたいと思ったんだろう。
2010年に大学を卒業するときに、お姉さんがサンフランシスコに引っ越した。で、彼も同調した。でもニックはなんと、サンフランシスコまでヒッチハイクで来たんだって!
そこで、いくつかの出会いがあり、Taylor Stitchでデザイナーとして働いている。
独学で縫製を学ぶ

サンフランシスコベイブリッジを渡ったオークランド地区のウエアハウス(倉庫)を住居兼アトリエにしていて、今でも週末には自宅のミシンを動かしている。
シーズンごとのコレクションはマーキーがテーマを出して、ニックがデザインに落とし込むという流れ。自宅のミシンを使ってデザインの試行錯誤を繰り返すらしい。

デザインに関してニックが考えるのは、まず「機能性」。そして「耐久性」。
ニックは「オフィスから山登りまで様々な生活スタイルに対応できるのがTaylor Stitchの服。トレンドを追うのもいいけど、50年後も着られるような服が良いと思う。」
「クラッシックというよりタイムレス。これが僕たちのデザインの根幹。」

縫製へのこだわりを動画で解説

生地や縫製のクオリティがTaylor Stitchのブランドとして製品化するに足りるかどうかを厳しくチェックするのもニックの仕事です。

そんな審査を経て生み出される製品へのこだわりの中から、今回は「縫製」について紹介します。 Taylor Stitchは、デザインする服やスタイルに合わせて異なる縫製技術を使い分け、その服に最も適した製造を行います。
ニックが言うように、丈夫で長持ちする服作りを目指しているため、それぞれの服に、適切なステッチや補強されるよう注意を払っています。 Jackを例にとって解説します。

ぜひ知っていただきたいのが“シングルニードルステッチ”です。文字通り1本針で縫い上げる縫製技術ですが、一度縫った後に縫い代を挟んでもう一度縫います。だから、動画で説明しているように、外から見れば1本の縫製ラインが内側を見ると2本の縫製ラインとなって完成しているのです。
縫製部分の強度を上げ耐久性を確保するために行われるのですが、手間(時間)がかかり、かつ高い技術が必要とされています。
そのため2本針で一度に縫い上げてしまう方法が一般的なのですが、そうすると洗濯を重ねるに従い、皺になっていくリスクが生じます。それでは長く着てもらう、というコンセプトには合わないのです。
シングルニードルステッチは一般的な法制に比べ2倍の強度がありますが、時間も3倍かかります。それをできるだけ価格に反映させずに提供したいと考えるのがTaylor Stitchです。なぜならブランド名にStitchを入れている以上、縫製には誇りを持っているからです。
シングルニードルステッチはTaylor Stitchのプライドです。
ですからこの縫製技術はJackだけではなく多くの製品で使われています。
オンラインストアでチェックしてみてください。

次回は生地についてのこだわりについて。ますますマニアックになりますよ!

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