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vol.10

RYO KOMUTA

新しいメディアのあり方を模索して

昨年、日本初上陸を果たし、鎌倉に海外初の旗艦店を構えたテイラー スティッチ。2008年にサンフランシスコで3人の若者が創業した新しいアパレルブランドだが、あくまでも本物にこだわる物づくりの姿勢から、口うるさい西海岸のファッションフリークから高い評価を受けている。そんな物づくりに情熱を燃やすテイラー ティッチが、さまざまなフィールドから同じ志を抱く人物をインタビュー。5人目は、ウェブマガジン『HOUYHNHNM(フイナム)』編集長として活躍する小牟田亮さん。

流行を追いかけるよりも、目の前の読者やファンを大切にしたい

最近ではクルマ系の記事にも力を入れていて、メルセデス・ベンツとビームスとタッグを組んだプロジェクトが進行中

——編集者を志したきっかけを教えてもらえますか?

僕が高校・大学生のときは、ファッション誌がいっぱい出ていて、すごく影響力があった時代でした。それを読んでファッションにのめり込んだんです。それでファッション業界に興味を持ち、スタイリストになりたいと思ったこともあったんですが、どうやら自分はファッションそのものよりも、ファッション誌が好きなんだなと気づいたんです。それが大学2年ぐらいでそれからあまり変わってないですね。

——それで大学卒業後にファッション誌の出版社に?

いや、出版社には入ったんですが、ファッションとは縁遠かったですね。ただ雑誌の中身は違いますけど、撮影をして入稿して1冊にするという編集作業の基本はそこで学びました。人数も少なかったので、ふたりで月刊誌を1冊つくって、間に増刊を作るという感じでした。1週間ぐらい会社に泊まったりとかしていましたね。今ならいろいろと問題になりそうですが(笑)。でも、修行にはなったと思っています。『フイナム』のことは創刊したときから知っていて、ずっと読者だったのですが、あるときスタッフ募集をしているのを知って、中途で入社しました。

「テイラー スティッチはスタンダードながら、つくり手の個性やスタイルが感じられるリアルクローズだと思います」  着用アイテムはコチラ

——以来、ファッションの世界を編集者として見てきたわけですが、今のトレンドはどのように見ていますか?

あまりにも細分化しすぎて、大きなトレンドが生まれにくくなっていると思います。生まれたとしても、すぐ消えてしまうことがほとんどではないでしょうか。例えばバッグ業界ではここ数年サコッシュがものすごく流行りましたが、最近ではウエストポーチが人気のようです。サコッシュの前はクラッチバッグでした。消費されるのが早すぎます。なのでトレンドを追うことを、あるときからやめました。いま僕が注目しているのは、インディペンデントなスタンスのつくり手たちです。自分の手の届く範囲でものづくりをして、地元の人を大切にしているようなクリエイターを応援したいという気持ちがあります。また、最近は新しい読者を増やすことよりも、今見てくれている読者としっかり向き合って、どうしたら彼らがもっと濃いファンになってくれるかに力を注いでいます。この考え方は『フイナム』のようなメディアだけでなく、どんな業界にでも当てはまるのではないでしょうか。

編集部がある代官山の書店にリサーチへ。デジタルが主流になった時代でも、主要な紙媒体には目を通すと言う

——それはテイラー スティッチの服づくりと相通じますね。流行を追わないで本質を追及する。そして、既存のファンを大切にしてリピートしていただく。

テイラー スティッチはスタンダードな服づくりをしていますよね。ベーシックで着る人を選ばない。ですが、スタンダードな服というのはいいものを作っていても、差別化するのが難しいと思うんです。そんななかテイラー スティッチは、つくり手がサーフィンやスケートボードなどをしていて、そのライフスタイルを服に落とし込んだリアルクローズを作っていて、そこにウソが一切ないのが強みだと思います。流行を気にして、服を作っていないですよね。その上で5年後も同じものを着られるような強度もある。

ウェブ、紙媒体と編集者としてマルチに活躍する小牟田さん。将来的には、動画の制作・ネット配信などにもチャレンジしたいと語る

——最後に、テイラー スティッチに望むことがありましたら、お聞かせ下さい。

日本でも、もっと多くの人に知ってもらえれば、それだけ支持を得られるブランドだと思います。服づくりとはアナログな作業の集積ですが、そこをきっちりと突き詰めたものづくりをしていながら、売り方がネット中心というのが非常に今っぽいなと思います。ネット販売に力を入れているというと、どうしても人の手のぬくもりのようなものから離れていくきらいがありますが、そのぬくもりをキープしながらブランドを運営できているのが素晴らしいですね。こうしたアプローチの先駆者として頑張ってほしいです。

PROFILE

RYO KOMUTA

小牟田亮
『HOUYHNHNM(フイナム)』編集長

1977年生まれ。埼玉県出身。出版社を経て、2006年に『HOUYHNHNM』編集へ。現在は編集長としてコンテンツ制作の指揮をとる。

houyhnhnm.jp
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