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vol.17

TAKA YASHIRO

眠っているハーレーに再び命を吹き込む

テイラー スティッチのスピリットは、どこまでも“本物”を追求すること。そのために“こだわり”と“情熱”はいとわない。
さまざまなフィールドには、同じ志を持って活躍する男達がいる。彼らを突き動かす原動力は? そして、何を求めているのか?
ここでは気になる一人をピックアップして、その思いを2回に分けて語ってもらう。きっと、そこにはテイラー スティッチとつながる何かがあるはず。
今回登場するのは、 ビンテージ・ハーレーダヴィッドソンのスペシャルショップ「BLUE GROOVE(ブルーグルーヴ)」代表のTAKAさんだ。

失われた古き良きアメリカのカルチャーをよみがえらせたい

現在、世界のビンテージ・ハーレー・シーンは、本国のアメリカに次いで日本がリードしていると言える。その牽引役がブルーグルーヴのTAKAさんだ

——まずはブルーグルーヴはどういう店か教えていただけますか。

1936年から、40年代、50年代を中心に、70年代までのビンテージ・ハーレーダヴィッドソンを主に扱っています。僕の主な仕事は、アメリカを横断しながらバイクを買い付けてくるんです。ニューヨークからロサンゼルスまで1万キロほどトラックで走ることも。それで納屋に何十年も眠っているハーレーを買い付けたり、スワップミートで目利きしてバラバラになったパーツを買ってくる。そして、ここでネジ1本まで全部バラバラにして、完全にオーバーホールをして日本全国のお客さんに届けます。

 

アメリカはもとより世界でも、ブルーグルーヴのようにビンテージ・ハーレーを突き詰めたショップは少ない。海外からも毎週のようにファンが訪ねてくる

——ビンテージ・ハーレーは人気があるんですか?

日本はもちろん、海外からもこのショップにはお客さんがきますね。ビンテージ・ハーレーの価値も高まっています。1936年の工場出荷のままのハーレーナックルヘッドの現存数はおそらく世界に5台ぐらいですが、その1台が7、8年前に本国のオークションにされた際は、アメリカの有名ロックミュージシャンが落札し、当時で75万ドルだった言われています。今はそれ以上の価値があるもの。「あの何年式のハーレーはあそこにある」と世界のマニアが把握している状態ですね。

——それにしてもアメリカ大陸を横断して買い付けるとは、手間も時間もかかりますよね。

ビンテージ・ハーレーを扱うショップは日本にも何店舗もありますが、毎年のようにアメリカを横断しながら買う、というのは世界でも僕くらいしかいない。今となっては、アメリカ人ですら中々いないわけですよ。それを僕が日本から来てやっているものだから、「お前はクレイジーだな」ということで、皆よくしてくれるところもあります。ただ「命がけ」のロードトリップも沢山ありますよ。

——えっ、命がけ!?

アメリカの田舎街へ行けば、未だに銃社会。買い付けはほとんどがキャッシュディールですから、かなりの用心をする。その様なエリアへ行けば銃声を聞くこともあれば、気を抜けば買い付けをしたばかりのハーレーが満載のトラックを盗まれかねない。売主はインターネットもメールやらないようなおじいさん達。中には「日本に持って帰るなら売らねえぞ」なんて言う人もいるわけです。でも、たいていそんなオールドバイカーのガレージにはギターがあるからブルースを弾くと、もう「お前はオレの息子だ」みたいにコロッとなることも(笑)。そこがアメリカ人のいいところでもある。とにかく毎回イーストコーストからカリフォルニアに着いた時の旅の安堵感は、やっと肩の荷が降りるといった感じです。

ギタリストとしても活躍するTAKAさん。アメリカにバイクを買い付けに行った時に、音楽がコミュニケーションツールになることも

——そこまでして追い求めるビンテージ・ハーレーの魅力とは?

クルマもギターもビンテージが好きですが、やはり唯一無二な存在だからですよね。自分達にとってはそれが最高にクールだと思えて、それを越えるものがないわけです。その時代にしか作れなかったシェイプですからね。ですが、今アメリカの日常からもそのような古き良き時代の物が消えてしまっている。だから、去年も1964年のシボレーエルカミーノでカリフォルニアを旅しましたが、フリーウエイで古いアメ車に乗っているのなんて自分だけ。街からも昔ながらの景色が消えてしまっている。だから、今となって、アメリカ人もブルーグルーヴまでわざわざ足を運ぶわけですよ。そして、古き良きアメリカをここで再発見するという現象になっている。世界を見渡してもブルーグルーヴの様なスタイルを持ったビンテージハーレーショップは少ないんだな、と言うことをふと気が付かされることがある。でも、自分はそういうものを未だに追いかけているワケだけれど、今となっては逆に追いかけられる立場になった。不思議なものですね。

 

ブルーグルーヴにはTAKAさんが求める世界であふれている

——何十年も前のバイクをレストアするのは難しいのでは?

アメリカはクルマやバイク、音楽にもおおらかさがあります。大陸も広いし、長さの単位もセンチの2・5倍のインチ。そういう感覚の元にプロダクトが生まれ、彼らのライフスタイルがある。僕らはそれを外から見ているから、いいところだけをつまめるんですよ。ビンテージ・ハーレーでいえば日本人はやはり器用だから、修理の方法もすごく細かい。アメリカの田舎道では走れば調子がよくても、渋滞の多い日本の交通事情では持ち応えられない。30年前の日本では古いハーレーを直せる人は少なかったと思うんですよ。ですが、僕等がみんな経験を積んでスキルが上がって完璧に近いレベルの修理ができるようになった。いつの間にかアメリカ人より修理技術と仕上げが上にいっている部分もあるんですよね。ただ、そのアメリカの大地が造りだすおおらかさだけは日本では成し得ない部分。だからいつまでも追いかけているのだと思う。

アメ車も好きだと言うTAKAさん。エルカミーノを始め数々の名車を乗り継いできた

——後編でもビンテージ・ハーレーの世界、そしてテイラー スティッチについても、お聞かせ下さい。

日本はもとより世界から注目を集めるブルーグルーヴをプロデュースするTAKAさん。バイクの買い付けのためにアメリカ大陸を飛び回る忙しい日々を送っている

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PROFILE

TAKA YASHIRO

矢代貴充
BLUE GROOVE代表

1977年生まれ。神奈川県・横浜出身。2002年、ビンテージ・ハーレーダヴィッドソンのスペシャルショップ「ブルーグルーヴ」を鎌倉にオープンさせた。半世紀以上も前のハーレーを丁寧にリビルド、レストアするクラフトマンシップに、日本はもとより海外からも高い評価を受ける。また、ブルーズギタリストとしても活躍し、ライブ演奏も行う。

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