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vol.21

ATSUSHI NAKAGAWA

サーファーの手で、海の環境を変えたい

テイラー スティッチのスピリットは、どこまでも“本物”を追求すること。そのために“こだわり”と“情熱”はいとわない。
さまざまなフィールドには、同じ志を持って活躍する男達がいる。彼らを突き動かす原動力は? そして、何を求めているのか?
ここでは気になる一人をピックアップして、その思いを2回に分けて語ってもらう。
きっと、そこにはテイラー スティッチとつながる何かがあるはず。
今回登場するのは、 「SURFRIDER FOUNDATION JAPAN(サーフライダーファウンデーション・ジャパン)」の代表理事として、海の環境問題に取り組む中川淳さんだ。

海を純粋に見ているサーファーだからこそ、真の環境活動ができる

湘南・藤沢にあるサーフライダーファウンデーション・ジャパンのオフィス。海は歩いてすぐ。仕事前にサーフィンすることも

——まず「SURFRIDER FOUNDATION JAPAN(サーフライダーファウンデーション・ジャパン)」は、どのような組織か教えて下さい。

1984年にカリフォルニアのサーファー達が作った組織です。当時、カリフォルニアは人口が爆発的に増えていて、インフラ整備が追いつかなかったんです。下水処理施設も未整備で、雨が降った時に汚水が海に流れ込んで、海水の匂いがひどかった。それで、「人体に悪い影響があるのではないか。僕らの健康を害するのではないか」と、サーファーが独自に水質調査活動をして、その調査結果をもとに行政に汚水処理を提議したことが始まりです。日本に上陸したのは1993年。ジェリー・ロペスら海外の有名なサーファー達が、日本各地をサーフトリップしていて、コンクリート護岸がすごく目立ち、ショックを受けた。「自然を損ねているじゃないか。アメリカではこういうNGO(非政府組織)がものすごく機能している。日本でもやったらいいんじゃないか」と日本のサーファーへ呼びかけてサーフライダーファウンデーション・ジャパンが発足しました。

 

定期的なビーチクリーンだけでなく、海へ行ったついでに、ゴミを拾う日常的な活動をサーファーへ呼びかけている

——30年以上の歴史がある組織なんですね。

はい。現在、世界23ヵ国で約25万人ほどのメンバーがいる国際環境NGOに成長しました。当初、日本ではアメリカを手本に活動をしようとしましたが、アメリカ風のいわゆる反体制側の社会運動みたいになりがちで、あまり機能してこなかったという側面があります。本来日本人というのは、自然と共存してきた歴史があるわけじゃないですか。高度経済成長期に一時見失ってしまったこともありますが、四季がある島国で、自然を大事にする意識が僕らのDNAの中にある。だから、反体制というスタンスを取らないと自然を守ることができないんだろうか、という違和感が僕の中にあった。そこで、2015年、僕が代表として再スタートをする時に、幅広く市民や行政の協力を得て環境保護を実現、政府を補完する役割を持つ公益性の高い環境団体にしていこうと舵を切りました。

オフィスの側で主宰する「海の寺子屋」。子供向けに海の環境問題にちなんだレクチャーを行う

——具体的には、どのような活動をされていますか。

さまざまな活動をしていますが、まずは昨今話題に上がる、プラスチックゴミ問題への取り組みですね。我々は、ビーチクリーン団体だとかボランティア団体ではありませんが、「草の根活動」の一歩として、ビーチクリーンを通して、海を知ってもらう、そして海の問題にかかわってもらうことは、とても重要なことだと考えています。ビーチクリーンをした後に拾ったゴミの分別をしてきれいに洗って、それをオブジェやアートにするワークショップを主催しています。楽しみながら、地球レベルで起こっている海岸漂流ゴミ、マイクロプラスチック、プラゴミ問題に自ら体験しながら目を向けてもらっています。またビーチだけでなくショッピングモールなどで同じようなワークショップや企業で環境に対するセミナーを開催しています。また協力企業とともに「海の寺子屋」という子供向けのワークショップや海の環境問題をテーマにした教育活動も行っています。

 

ビーチクリーンの後には、拾ったゴミでオブジェやアートを作るワークショップを開催。楽しみながら、プラスチックゴミ問題と向き合える

——行政に働きかけて、海の水質改善につながる大きな実績を挙げたことが、サーファーの間で話題になったそうですね。

はい。サーファーに人気の湘南・藤沢市辻堂に大きな下水処理施設があります。けれども、建設から55年も経っていて老朽化も著しく、大幅に人口が増えてしまったので、処理能力が追いつかない。そのために雨が降った後、海がものすごく匂い汚くなる。そこでコツコツと地域の人達と一緒に水質調査活動をして、海に流れ込む下水の危険性を行政に提議しました。5年、10年かかる長期的な活動になると思っていたのですが、理にかなった市民活動と評価されて、2年後に環境基準100%を満たす下水処理施設に改善することが藤沢市の議会で採択されました。5カ年計画で70億円の予算です。事業規模も大きく、環境団体の功績として国際的にもすごく評価されています。

中川さんが代表理事に就任してから、行政や企業との協力や支援も増えた

——サーファーの海や自然環境に対する意識はすごく高いですよね。何が理由だと思いますか。

僕らって海とダイレクトじゃないですか。自らが接している海に対して敏感にならざるを得ない。海の側に住んでいるサーファーだったら、漁師さんに負けないぐらいしょっちゅう海に通っています。それに利害関係がなくものすごく純粋に海を見ているんですよ。既得権益に左右されないということは環境保護としてはとても有効性があることで、そういう意味でも、サーファーの環境団体というのはとても貴重ではないかと思います。

「早く次世代の若いサーファーに活動を引き継ぎたい」と語る中川さん。だが、まだまだその活躍への期待は大きい

——後編でも海の環境問題、そしてテイラー スティッチについて、お聞かせ下さい。

PROFILE

ATSUSHI NAKAGAWA

中川淳
SURFRIDER FOUNDATION JAPAN(サーフライダーファウンデーション・ジャパン)代表理事

1965年横浜生まれ。2015年、国際環境NGO 「SURFRIDER FOUNDATION JAPAN(サーフライダーファウンデーション・ジャパン)」の代表理事に就任。以後、湘南・藤沢市をベースに海の環境保護活動を推進する。

www.surfrider.jp
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