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vol.9

RYO KOMUTA

新しいメディアのあり方を模索して

昨年、日本初上陸を果たし、鎌倉に海外初の旗艦店を構えたテイラー スティッチ。2008年にサンフランシスコで3人の若者が創業した新しいアパレルブランドだが、あくまでも本物にこだわる物づくりの姿勢から、口うるさい西海岸のファッションフリークから高い評価を受けている。そんな物づくりに情熱を燃やすテイラー スティッチが、さまざまなフィールドから同じ志を抱く人物をインタビュー。5人目は、ウェブマガジン『HOUYHNHNM(フイナム)』編集長として活躍する小牟田亮さん。

誰もが情報を発信できる時代だからこそ、編集者の価値がある

お気に入りの「ヨセミテシャツ」と「スリムジーンズ」を着て、編集部の近くにあるカフェへ。リフレッシュのひと時  着用アイテムはコチラ

——フイナムとは、どんなメディアか教えてもらえますか?

2004年から始まったファッション・ウェブマガジンです。当初は雑誌をそのままウェブに持っていったような体裁で、ページをめくるようなアニメーションを導入していました。その当時はPCで見ることを前提としていたのですが、次第にスマートフォンが主流になってきたので、今は毎日更新しているニュース記事とちょっと掘り下げた特集記事、あとはファッション業界内外のいろんなインフルエンサーの方に書いていただくブログなどがコンテンツの中心です。最近はファッションもやりながら、衣食住のライフスタイル系の記事にもかなり力を入れています。

——ファッション・ウェブマガジンながら、ライフスタイルに力を入れている理由は?

僕はフイナムに携わって12年経つのですが、歳をとるにつれて興味の対象がファッション以外の世界にも広がってきました。それに加えて世の中の動向を注意深く観察していると、やはりライフスタイル的なコンテンツが求められていると強く感じます。ただあくまでも、ファッション的なフィルターを通して、食べ物などのライフスタイルについての物事を紹介しています。

半年に1冊のペースで出版している『フイナム アンプラグド』。編集者として、紙媒体とウェブマガジンには異なった魅力があると言う

——『フイナム』は、日本ではウェブマガジンのさきがけだと思いますが、4年前から、紙媒体の『フイナム アンプラグド』を出版していますね。逆行している動きはおもしろく見えます。

編集部はほとんどが“雑誌上がり”で、ウェブマガジンをやりながら雑誌に対する愛着もあって、やれるものならやりたいなとずっと思っていました。雑誌を立ち上げることは簡単ではないですが、ご縁があって出版社からお話をいただいてスタートさせることができました。半年に1回のペースで発行していて、いまはこれがちょうどいいペースかなと思っています。制作に半年ぐらい時間をかけられるので、誌面を作り込めるのがありがたいですね。僕は『フイナム アンプラグド』では副編集長として、記事をつくりつつ、スタッフをまとめています。

——ウェブマガジンとは異なりますね。

はい。ウェブのよさも当然あります。いつでもどこでも見れるということと、つくった記事がどれだけ読まれているかがわかること、そしてなにより拡散されやすいことでしょうか。あとは、予期せぬことで昔の記事が注目を浴びたりということもあります。世の中である事象が流行ったとして、前にそのテーマで取材していた記事があると、その記事が一時的にランキング上位になるなど。そういう点も面白いなと思います。

学生時代、ファッション雑誌が大好きで編集者の道を選んだ小牟田さん。日々、やりがいがある毎日を送っていると言う  着用アイテムはコチラ

——編集長としてこだわっていることは?

編集スタッフはみんなファッションが大好きですが、古着が好きなスタッフもいるし、きれいめな服が好きなスタッフもいます。一般的なファッション誌だったら一定のテイストが好きな人がそろうと思うんですが、うちはそういうふうにはしてなくて、バラバラの趣味嗜好を持っているスタッフが集まっています。ですが、これはちょっと違うかな、という部分は必ずみんなで共有するようにしています。カッコいいはいろいろあってもいいんですが、カッコ悪いの目線は揃えておきたいということなんです。そこが共有できないと、おそらく一緒には働けないと思います。

『フイナム』の編集スタッフの趣味嗜好は多岐に渡るという。その個性をまとめて一つの媒体としてまとめるのが編集長の力

——編集長としてのやりがいは?

おもしろいものを見つけてきて世に出す編集的な行為が好きなので、それに携われている時点で、相当やりがいがあります。変な話、日曜日の夜に「明日、会社に行くのが嫌だなあ」と思ったことは一度もないですね。今はさまざまなSNSがあるので、個人でいくらでも発信ができるようになりました。『フイナム』のようなメディアの未来は暗い、というような論調の記事もよく見かけます。ですが、あらゆる情報に簡単にアクセスできるようになったいまだからこそ、情報をきちんと選び、集め、編む、という編集の仕事は、意義があると思います。

——ありがとうございました。後編では小牟田さん個人のことやファッションについてお聞かせ下さい。

スタンダードな服が好きと言う小牟田さん。「テイラー スティッチはジャストフィットするサイズ感がいいですね」

PROFILE

RYO KOMUTA

小牟田亮
『HOUYHNHNM(フイナム)』編集長

1977年生まれ。埼玉県出身。出版社を経て、2006年に『HOUYHNHNM』編集へ。現在は編集長としてコンテンツ制作の指揮をとる。

houyhnhnm.jp
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